子どもの耳鼻咽喉科
小児耳鼻科では、子どもの耳・鼻・喉、そして首を含む頭頚部を専門的に診療しています。耳・鼻・喉は重要な感覚器官であり、生命維持に欠かせない役割を担っていることから、異常があると不快感を生じて注意力や集中力を低下させます。子どもの場合、呼吸や聴覚に異常があると成長や学習にも大きく影響します。さらに幼い子どもは症状があってもそれを言葉にして伝えることができません。日頃、身近に接している大人が、ちょっとした変化や異常を見逃さないことが重要です。気になる症状がある場合だけでなく、少しでも「おかしい」と感じたら、気軽にご相談ください。
こんな症状は
ありませんか?
耳
- 耳をしきりと触っている
- 耳に触れようとすると嫌がる
- 機嫌が悪い状態が続いている
- 声をかけても反応しないことがある
- 会話中に聞き返す頻度が高い
- 話し声が大きくなった
- テレビやタブレットの音量を自分で上げる
- 無音なのに音が鳴っていると訴える
- 会話中、片耳を相手に向ける
- 耳が痒いと訴える
- 耳垢がたまっているが、耳掃除はなんだか怖い
など
お子様の診察の注意点
当院の検査や処置、治療では、細心の注意を払った診療を行っていますが、お子様の身動きが鼓膜穿孔や耳小骨離断など重大な事故につながる可能性があります。
幼いお子様の場合、万が一の事故を防ぐために必要となれば保護者の方にもご協力いただき正しい抑え方をした上で診療を行っています。泣いている子どもを無理矢理抑えるのはと躊躇する気持ちはわかりますが、しっかり抑えることではじめて事故を防ぐことができます。お子様のために、ご協力ください。
なお、これ以外にも気になる点やご質問がありましたら、些細なことでも気軽にお伝えください。保護者の方が納得され、落ち着いて対処されることがお子様の安心につながりますので、遠慮なくご質問ください。
子どもによくある
耳鼻咽喉科の症状・病気
耳垢栓塞
耳垢は自然に奥から手前に運ばれて排泄されるようになっていますが、時として耳垢が外耳道に詰まる耳垢塞栓が生じる場合があります。耳垢塞栓の主な原因には、耳掃除で耳垢を中に押し込んでしまう、外耳道に入り込んだ水分で耳垢が膨張するなどがあります。ご自分で耳垢塞栓を解消しようとすると、余計に耳垢を奥へ押し込んでしまうこともあります。耳垢塞栓は耳鼻咽喉科で安全に解消できますので気軽にご相談ください。
風邪症候群
(インフルエンザ、ヘルパンギーナ、
手足口病、RSウイルス)
くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、咳、痰、頭痛、発熱といった症状を起こす風邪は、子どもから高齢者まで幅広い年齢の方がかかる一般的な病気です。風邪は、様々な病気によって生じることから「風邪症候群」と総称されており、主な原因はウイルス感染です。基本的に特効薬がないことから、対症療法で症状を緩和させ、十分な水分を補給して安静を保つことが重要です。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスによって生じ、感染力が強いため毎年冬になると学校などで集団感染を起こします。一般的な風邪と比べて症状が重い傾向があり、合併症を起こすリスクもあることから、幼児や高齢者にとっては注意が必要な感染症です。
ヘルパンギーナ
コクサッキーウイルス感染によって生じます。発熱と口内の粘膜に水疱性の発疹が生じます。ヘルパンギーナと手足口病は乳幼児の流行を夏に起こしやすく、夏風邪と呼ばれることもあります。
手足口病
コクサッキーウイルス感染によって生じます。口内や手足に発疹ができるという特徴的な症状を起こします。ヘルパンギーナと同様、乳幼児の間で夏になると流行しやすい感染症です。
RSウイルス
典型的には4~6日の潜伏期間の後、発熱や鼻汁などの症状が数日間続きます。乳幼児の場合、症状が悪化しやすく、気管支炎や肺炎を伴う可能性があり注意が必要です。冬の感染が多い傾向がありますが、冬以外の季節にも生じることがあります。
中耳炎(急性・滲出性・慢性)
中耳炎では、鼓膜の奥にある中耳に細菌やウイルスが感染し、炎症を起こしています。急性中耳炎は、主に風邪などの炎症が中耳に及んで生じます。他に、中耳に滲出液がたまっている滲出性中耳炎、急性中耳炎が慢性化した慢性中耳炎などがあります。
中耳炎は子どもの発症が多く、小学校低学年までに6~7割の子どもが1度は中耳炎になっているとされています。特に生後半年から2歳までの罹患率が高いことが知られており、繰り返し急性中耳炎になるケースもあります。
急性中耳炎
風邪などの鼻や喉の炎症が中耳にも広がって発症するケースがほとんどを占めます。主な症状は耳の痛み、発熱、耳漏(耳だれ)です。中耳には耳と鼻をつなぐ耳管という管がありますが、子どもの耳管は太くて短く、しかも水平なので鼻や喉の炎症で増殖したウイルスや細菌が耳管を通じて中耳に侵入しやすく、急性中耳炎は幼い子どもの発症が多くなっています。
抗生物質や痛み止めの処方による治療を行いますが、膿がたまっていて鼓膜の腫れや痛み、熱などの症状がある場合には鼓膜切開を行います。鼓膜切開をすることで症状も速やかに解消できます。
滲出性中耳炎
滲出液が中耳にたまっている状態で、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、咽頭炎などの原因疾患によって生じます。急性中耳炎と違い、痛みなどの症状を起こさないことから気付きにくい傾向がありますが、慢性化すると治りにくくなり、子どもの難聴の主な原因となっています。
原因疾患の治療を行いながら経過を慎重に観察しますが、状態によっては鼓膜切開を行って滲出液を排出させる必要が生じる場合もあります。
慢性中耳炎
急性中耳炎が治りきらずに慢性化したケースに加え、滲出性中耳炎が慢性化した状態を含みます。鼓膜に穴が開いた状態が続いて自然な修復がされず、耳漏(耳だれ)を生じます。
抗生物質の内服や点耳による治療を基本的に行いますが、鼓膜や耳小骨という聴覚を担っている器官に異常を及ぼす可能性がある場合には外科手術が必要になります。
副鼻腔炎(急性)
副鼻腔(ふくびくう)は、額や頬の目の下などに薄く広がっている空洞で、鼻腔とつながっており、4つの空洞が左右対称に存在しています。副鼻腔炎は副鼻腔粘膜に炎症を起こしている状態で、粘り気のある緑や黄色がかった鼻水、鼻詰まりなどの症状を起こします。副鼻腔に膿がたまると頭・額・目の下の痛み、歯痛、匂いがわからないなどを起こすこともあります。
副鼻腔炎の主な原因は風邪などの感染症であり、急性期には風邪による鼻炎症状と区別が困難です。自然に治ることもありますが、慢性化すると蓄膿症となり、呼吸への悪影響も生じる可能性がありますので、できるだけ早く適切な治療を受け、しっかり治すことが重要です。
いびき・
睡眠時無呼吸症候群
子どもは基本的にいびきをかきませんので、お子様がいびきをかいている場合、病気が隠れている可能性があります。特に注意が必要なのは、睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群では大きないびきを起こすだけでなく、睡眠中に呼吸が何度も止まってしまっています。呼吸が止まることで睡眠の質が大きく低下して成長を妨げ、慢性的に昼間の眠気を起こして集中力を大幅に低下させてしまいます。成人の病気として知られるようになってきていますが、15歳以下の子どもにも生じることがあります。
子どもの睡眠時無呼吸症候群では、落ち着きのなさ、集中力低下、粗暴な言動などから発見されるケースや、顎などの骨格形成によって生じているケースもあります。高次脳機能や心身の成長発達にも影響しますので、疑わしい場合には気軽にご相談ください。