首の病気
耳鼻咽喉科では、耳・鼻・喉だけでなく、頭頚部(脳以外の頭部と首を含む頚部)の病気も診療範囲となっています。
例えば、首の腫れを起こす頚部リンパ腫脹、唾液を分泌する耳下腺や顎下腺にできる腫瘍も耳鼻咽喉科の専門分野に含まれる疾患です。他にも、喉頭・咽頭・口腔・副鼻腔である上顎洞などに生じた腫瘍に関しても耳鼻咽喉科で診断が可能です。
首の症状
- 食事をすると首が痛む
- 首のしこり
- 首の腫れ
- 耳まわりのしこり
- 顎付近のしこり
- 首に痛みがある
- 顎、舌の下に腫れがある
- 声枯れがある
- 口内炎が長引く
首の病気
唾石症
唾液を作って分泌する唾液腺の導管は口腔内に多くの開口部を持っています。唾液腺は、大唾液腺と小唾液腺に大きく分けられます。人間の大唾液腺は、耳の下にある耳下腺、顎の下にある顎下腺、口腔底に舌下腺があります。唾石症では、唾液腺や唾液の通る導管に唾石という石ができてしまう病気です。唾石のサイズは砂粒程度から数㎝にもなるものまであります。唾石によって唾液腺の分泌が阻害されると唾液腺の炎症や腫脹を生じ、腫れや痛みなどの症状を起こします。
頚部リンパ節腫脹
全身に張り巡らされたリンパ管には、リンパ節が存在し、細菌感染などを防ぐ役割を担っています。頚部には多くのリンパ節が存在し、炎症などによって腫れを起こすことがあります。頚部リンパ節腫脹は、頚部のリンパ節に炎症が生じて腫れを起こしている状態であり、頚部リンパ節炎とも呼ばれます。口腔内や喉の奥などに生じた細菌やウイルスによる感染によって生じますが、喉や血液の腫瘍によって生じているケースも存在します。こうしたことから、頚部リンパ節腫脹がある場合には、耳鼻咽喉科による頚部の専門的な診療が必要となります。
当院では、極細で高精細な内視鏡スコープによる喉の奥の観察や血液検査などを行って診断しています。さらに、必要に応じ、針で刺して腫れが起こっている組織を採取し、検査を行う場合もあります。
化膿性リンパ節炎
口腔・咽頭または頭頚部の皮膚の感染によって増殖した細菌によってリンパ節の炎症が起きている状態です。急性の場合には溶連菌やブドウ球菌によって生じている場合がしばしばあり、慢性の場合には結核が疑われますのでツベルクリン反応などの実施を検討します。
菊池病
(組織球性壊死性リンパ節炎・
亜急性壊死性リンパ節炎)
菊池病は良性のリンパ節炎であり、主な症状は発熱と頚部(首)のリンパ節腫脹です。リンパ節腫脹は片側のみに生じるケースが8割程度を占めています。38度以上の高熱が数週間続くこともあり、発疹、吐き気や嘔吐、腹痛、関節痛、肝臓や脾臓の腫れ、体重減少などの症状を伴う場合もあります。治療は対症療法が行われ、ステロイドによる治療も有効であり、状態を確認しながら薬の量を減らしていくことが重要です。治療を受けなくても自然に治るとされていますが、回復までには1か月から1年程度かかります。
亜急性甲状腺炎
甲状腺内に一過性の炎症を起こし、甲状腺の組織が破壊されることで大量の甲状腺ホルモンが血中に漏出し、甲状腺中毒症を起こします。甲状腺の炎症による前頚部の疼痛と発熱に加え、甲状腺中毒症の症状を起こします。
ウイルス感染によって生じるケースがありますが、原因のウイルス特定には至っていません。
数か月程度で改善が期待できますが、急性期の症状によってはステロイドを中心にした治療が必要な場合もあります。
甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に大きく分けられ、約90%を良性が占めています。自覚症状はほとんどありませんが、大きくなると触れたり見た目に変化が起きたりといったことで発見される場合があります。また、近年では検診で発見されるケースもあります。
良性の甲状腺腫瘍には腺腫様甲状腺腫、濾胞腺腫、甲状腺囊胞などが、悪性の甲状腺腫瘍には乳頭がん、濾胞がんなどがあります。触診、血液検査、超音波(エコー)検査、細い針で組織を採取して行う穿刺吸引細胞診検査などを行って診断し、治療方針を決めます。
耳下腺腫瘍
唾液を作って分泌する耳下腺にできる腫瘍です。耳下腺は耳の下周辺にあり、耳の周囲にしこりができて気付くケースが多くなっています。耳下腺腫瘍には良性と悪性があり、良性腫瘍にも放置することで悪性化を起こす可能性がありますので、しこりに気付いたらできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。なお、悪性の場合、耳下腺の中を走る顔面神経の麻痺を起こすこともあります。超音波(エコー)検査などの画像検査や針を刺して腫瘍の組織を採取し検査する細胞診などによる診断を行います。細胞診が必要と判断された場合には、連携している高度医療機関をご紹介します。治すためには手術が必要となりますので、正確な診断を受け、治療方針をしっかり立てることが重要です。
顎下腺腫瘍
顎下腺は左右の下顎骨の下にある唾液腺で唾液を作って分泌しています。顎下腺腫瘍は腫瘍の種類やサイズで症状が異なります。良性と悪性に分けられますが、細胞診で良性でも低悪性度腫瘍というケースがあることから、良性でも手術での摘出が行われます。
良性腫瘍の場合
症状を起こすことはほとんどありません。細胞診では低悪性度腫瘍の発見が困難な場合がありますので、良性の場合も手術をお勧めしています。
悪性腫瘍の場合
顎下部の腫瘤、痛み、顔面神経麻痺などを生じることがあります。患者様の状態や進行度、ライフスタイルなどを十分考慮した上で、手術、放射線療法、化学療法などを組み合わせた治療を行います。治療は、連携している高度医療機関をご紹介します。